飲食店経営だけでは不十分な時代へ

– 個人飲食店経営者が生き抜くための複線型収入戦略と物販導入の基本 –

飲食店経営だけでは不十分な時代へ
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1. 本業が「当たれば大きい」時代はもう終わった

飲食店一本で安定して生計を立てることが難しくなってきた今、経営者に求められるのは“複線型の収益構造”です。

  • 原材料・光熱費の高騰
  • 労働力不足
  • 不確実性の高い営業環境
  • SNS・レビューによる風評リスク

こうした外的要因から守るためにも、飲食の延長線上での副収入源の確保が必須です。


2. 最も現実的な副業:自店商品の物販化

今、飲食店経営者が真っ先に取り組むべき副業は、自店の味を商品化して販売する“食品物販”です。

  • 冷凍餃子・カレー・スープなどの加工品
  • 自家製ドレッシングやラー油、つけだれ
  • お土産用セットやギフトパッケージ

物販は「自分が働かなくても売上を生む構造」が作れるため、

  • 営業外時間に売れる
  • 店舗に来られない客にも届く
  • 地方やECを通じてブランドの拡張が可能 という点で非常に有効です。

3. 食品の物販に必要な許可・届出とは?

飲食店営業許可だけでは、食品を販売用に加工・包装して提供することはできません。

以下の許可や届出が必要になります:

▶ 必要な許可(例)

  • 食品製造業許可(冷凍食品・瓶詰調味料など)
  • 菓子製造業許可(スイーツ類)
  • そうざい製造業許可(弁当・惣菜)

※扱う食品の種類に応じて保健所と要相談。

▶ 許可取得に必要な条件

  • 専用の加工スペース(飲食営業と明確に区分されていることが望ましい)
  • 作業台、冷蔵庫、シンクなど基準を満たす設備
  • 衛生管理計画書の提出

▶ 費用の目安

  • 許可申請料:約16,000〜25,000円(地域差あり)
  • 設備改修費:約10万〜50万円(スペース次第)

▶ 取得先

  • 店舗所在地を管轄する保健所

事前に保健所へ相談に行き、図面や計画を見てもらった上で申請するのが確実です。


4. 販売場所の選択肢(簡単に始められる市場も)

加工した食品を販売するための販路には以下のようなものがあります:

▶ 店舗併設販売

  • レジ横で冷凍商品を販売
  • テイクアウト商品としてセット販売

▶ EC販売(ネット通販)

  • BASE、STORESなど無料で始められるネットショップ
  • 楽天市場・Amazonなどへの出品(中級者向け)
  • Instagram・LINE公式などSNS経由の受注対応

▶ 地元スーパー・直売所への委託販売

  • 契約・手数料は要確認
  • 店舗の信用やブランド構築にもつながる

▶ Mマート・業務用BtoB取引

  • 飲食業者向けBtoBマーケットプレイス「Mマート」では、飲食店が業務用商材を出品・販売可能。
  • 専門性のある調味料や冷凍品などを扱うことで、小ロットでもリピートにつながる可能性あり。
  • 登録と出品は比較的簡単で、価格競争より“商品力”が問われる。

▶ メルカリ・ラクマなどのフリマアプリ

  • 一般消費者向けの販売なら、メルカリやラクマも有効な販路。
  • 梱包・発送作業の手間はあるが、少量生産でも利益を確保しやすく、非常に手軽な現金化手段として機能する。
  • 店舗の存在をPRするきっかけにもなり、SNSと連動した販売も可能。

▶ 地域イベント・マルシェ

  • 出店形式で販売・PRが可能
  • 顧客の生の反応が得られる貴重な場

5. その他の副業(選択肢として)

以下の副業は確かに可能性がありますが、いずれも収益化のハードルが高く、手軽に始めてすぐに成果が出るものではありません。あくまで選択肢のひとつとして検討してください。

▷ SNS・YouTube発信

飲食の裏側や店舗運営の知見を発信することで、集客や広告収入につながる可能性はあります。ただし、視聴者を集めるまでに長い時間と継続的な努力が必要で、途中で挫折する人が非常に多いのが実情です。

▷ 空き時間の間貸し(場所貸し)

モーニング営業希望者やイベント利用者へのレンタル収入も魅力的に見えますが、立地やニーズが合わなければ成り立ちません。定期収入として成立するには時間がかかります。

▷ 開業支援・コンサルティング

経験を体系化し、指導料や業務委託として提供する道もありますが、信頼性・実績・紹介力がないと継続的な仕事にはなりづらいです。副業というより「第二の本業」レベルの準備が求められます。経験を体系化し、指導料や業務委託として提供。


6. 投資という“静かな収益軸”を育てる

副業とは別に、現代人全員がやるべき資金管理法として「投資」を忘れてはいけません。

  • 少額から始められる積立投資(つみたてNISA・iDeCo)
  • 株・投資信託など中長期運用

飲食店経営のリターンは大きいが不安定。 だからこそ、“放っておいて増える仕組み”を同時に持っておくことが経営者の防衛力になります。


7. 即行動型の現金収入も“持っておく”

売上が落ちた時や、キャッシュが一時的に足りない時に、

  • ウーバーイーツ配達
  • タイミー等スポットワーク で稼ぐスキルも立派な経営能力です。

「事業がダメな月」もある。 その時に自分を守る行動力が、経営の継続力を支えます。


まとめ:軸は飲食、でも構造は分散型に

飲食業を本業としながらも、“売上の足”を複数持つ。 それが、これからの飲食経営者に求められる生存戦略です。

  • 自店商品の物販化から始める
  • 投資と資金管理を習慣にする
  • 必要時には自らも動く選択肢を持つ

本業の夢と、現実のリスク。両方を見据えた柔軟な構えが、これからの時代を生きる飲食人に求められています。