「現場が得意=経営ができる」は大きな勘違い
1.「現場で重宝される人」が最も起業で失敗しやすい理由 ……
数年前まで「飲食店=独立の花形」という幻想がありました。SNSでバズれば即行列、コロナ禍でもテイクアウトやデリバリーで何とかしのげた。しかし、今は時代が違います。
これが、2025年現在の飲食店の「地盤」です。過去の成功モデルをなぞっても、今の地盤では同じ建物は建ちません。
帝国データバンクの調査によると、2024年の飲食店廃業数は開業数を上回りました。特に地方都市や郊外では、「人が戻らない」「集客が安定しない」「リピーターにならない」という悩みが急増。
そして、その多くが“売上はあるのに利益が残らない”という典型的な経営破綻です。つまり、売れることよりも“儲けること”が難しい時代に入ったということ。
華やかなメニューや映える外観ではなく、原価率・人件費率・家賃比率を冷静に設計してください。
一等地や大型物件を狙う必要はありません。むしろ、「10坪の店で利益が出せる構造を作る」方が遥かに難易度が低く、失敗してもリカバリーしやすい。
営業中にキッチンに立ちながら、SNS更新、スタッフ管理、会計処理…はできません。仕組みか人材か、自動化か委託か、自分の代わりを持つ前提で計画を。
目立つ立地は高コストです。むしろ、「近所の人が週2で来てくれる」立地の方が、LTV(顧客生涯価値)が高い。
飲食業において「いつ撤退するか」を決めている人だけが生き残ります。事業の始め方だけでなく、終わり方も計画に含めてください。
「黒字倒産」という言葉を聞いたことがあると思います。これは帳簿上は利益が出ているのに、手元の現金が足りずに事業継続ができなくなる状態を指します。
飲食業では、これが非常に起こりやすい構造になっています。
たとえば月商300万円、利益率10%で営業利益30万円が出ていたとしても、その裏で見落とされがちな支出があります。
これらを考慮していないと、数字上の黒字がまったく意味をなさないのです。
消費税は「預かり金」ではありません。これは、売上にかかる消費税から、仕入・経費にかかった消費税を差し引いた差額に対して課税される付加価値税です。
とはいえ、多くの事業者が税込価格で商品を提供し、税額分をそのまま使ってしまうため、あとから納税時にキャッシュ不足に陥るケースが後を絶ちません。
特に開業初期は、設備投資の控除が終わると控除額が減るため、納税負担が突然重くなることも珍しくありません。
個人事業主であれば、所得税・住民税・国保税が翌年春にまとめて請求されます。法人であれば、法人税・地方法人税・住民税が期末後に襲ってきます。
開業から1年目は気づかなくても、2年目に資金が尽きて廃業に追い込まれる人が後を絶ちません。
大切なのは「現金が残る構造かどうか」です。
「売上があるのに潰れる店」と「少ない売上でも生き残る店」の違いは、 “数字の見方”ではなく“構造の設計”にあります。
ここまで厳しい現実を並べてきましたが、それでも私は「小さな飲食業」には挑戦する価値があると思っています。なぜなら、飲食店は単なる商売ではなく、人の暮らしと文化に密接に関わる“生活文化事業”だからです。
ただし、それは「飲食が好き」「いつか自分の店を持ちたい」という夢だけでは到底乗り越えられない時代に突入しています。
とくに注意すべきなのは、以下のような開業者像です:
このような背景では、開業直後に集客できず、半年以内に資金が尽き、借金だけが残るケースが非常に多いのが現実です。 夜逃げ、自己破産、家庭崩壊――これは誇張ではなく、実際に多くの飲食店が辿る悲惨な末路です。
だからこそ、今の時代においては「プロの力を借りて、最初のスタートラインに正しく立つ」ことが生存確率を高めます。
こうした戦略的な“伴走者”を持つことで、無謀な単独開業に比べて安全に離陸する確率は大きく上がるのです。
飲食店開業は、人生を賭けた“文化と経済の両立事業”です。 夢や情熱を無駄にせず、現実的な設計と信頼できる支援者を手に、あなたの未来を形にしてください。 誰かの「日常」に寄り添いながら、自分の人生も守る。そんな事業設計を、あなたの手で形にしていってください。
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