なぜ飲食現場で必死に働いても「独立できる人」は生まれないのか?

– 労働と経営スキルの断絶構造を読み解く –

なぜ飲食現場で必死に働いても「独立できる人」は生まれないのか?
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1. 飲食業界の現場にある「努力が報われない構造」

日本の飲食店では、日々多くの人が低賃金・長時間労働という過酷な環境で働いています。朝から晩まで仕込み・営業・片付けに追われ、週休1日、月収20万円以下という環境も少なくありません。

しかし、その努力が「将来の独立」や「経営スキルの習得」につながるかといえば、答えはNOです。


2. 現場労働は「再現性のないルーチン」に閉じている

多くの飲食店では、仕込み・調理・接客・清掃などの業務は徹底して標準化・分業化されています。これは効率化という意味では正しい選択ですが、そこで働くスタッフにとっては、「考える」「設計する」「数字を見る」機会が一切与えられないことを意味します。

つまり、

  • 魚を捌けても「原価率」はわからない
  • 接客が得意でも「粗利率」は理解していない
  • 忙しい店を回していても「損益計算書」は読めない

という状態に、多くの飲食人が置かれています。


3. 学べない理由①:店舗運営に“経営スキルの教育機能”がない

現場において店長・社員が育てられるのは「現場を回せる人材」であり、「経営を担える人材」ではありません。

なぜなら、一般の飲食企業や個人店には、以下のような余白が存在しないからです:

  • スタッフにPL(損益)を開示する文化がない
  • 教える時間も仕組みもない
  • 教えたところで独立されて辞められると困る

結果として、経営の根幹は経営者の中だけに閉じられ、スタッフは“実務の奴隷”として機能するだけの存在になりがちです。


4. 学べない理由②:「労働」と「経営」が完全に切り離されている

もっと根本的な問題として、日本の飲食業界では“労働者”と“経営者”の間に越えられない壁があります。

多くの飲食人は、

  • 目の前の仕事を「やる」訓練はされる
  • だが、お金の流れや意思決定の裏側を「知る」機会がない

つまり、一生懸命働けばいつか独立できるという幻想は、構造的に成立しないようになっているのです。


5. 結果:「やる気」だけでは、むしろ破滅に向かう

仮にそのような現場で10年働いたとします。

  • 調理は得意になった
  • 接客も問題ない

しかし、

  • 資金調達の方法はわからない
  • 立地選定のロジックもない
  • 税金や社会保険の理解もない

この状態で独立したらどうなるでしょうか? → 「好きな料理を出したい」だけで開業 → 想定外の支出・集客難 → 半年で資金ショート・廃業 という末路が、今全国で繰り返されています。


6. 本当に必要なスキル:広告・立地選定・価格設計

多くの飲食人が軽視しがちですが、飲食店の経営において最重要なのは「広告(集客)」と「立地(選定)」です。

■ 飲食店の集客は「美味しい」より「見つけてもらえるか」で決まる

どれだけ料理が美味しくても、知られなければ誰も来ません。開業前に最も重視すべきは、

  • 誰に来てほしいのか?(ターゲット)
  • どこで出店すればその人に届くのか?(立地)
  • どうすれば開業初日から見つけてもらえるのか?(広告)

です。

「味で勝負」は尊い思想ですが、現実には勝負の土俵に立つ前に淘汰される店がほとんどです。

■ 立地は「出店前に勝負が決まっている」と言っても過言ではない

駅からの距離、通行量、周辺人口、競合、駐車場の有無――こうした要素をロジカルに分析しないまま出店すると、

  • 人通りがない
  • 想定客層とズレている
  • 周囲の価格帯に合っていない という致命的な失敗が起こります。

そして立地の失敗は、努力ではどうにもならない固定条件です。

■ 開業とは、「店を作る」前に「市場に参加する」判断である

出店エリアと広告戦略を誤った店は、どれだけ現場力が高くても結果が出ません。逆に、立地と広告の設計がしっかりしていれば、多少オペレーションに粗があっても人は来ます。

つまり、調理スキルよりもまず「選定」と「伝達」の能力を持つべきなのです。


7. 解決策:現場に“経営の視点”を持ち込む仕組みを

飲食人が本当に独立できるようになるためには、以下のような取り組みが必要です:

  • 現場でPL(損益)を共有し、数値感覚を育てる
  • 経営者が「戦略思考」を言語化し、現場と共有する
  • 独立志望者には教育プログラムを提供し、伴走する

これは単なる「やさしさ」ではありません。そうすることで現場に当事者が育ち、組織としての強さも増すからです。


8. 最後に:現場の努力が“未来の武器”になるように

私たちは、飲食現場で働く人々の努力を無駄にしたくありません。

汗を流し、理不尽にも耐え、無遅刻無欠勤で働くその姿が、きちんと「将来の糧」になるように。

そのために、RBR合同会社では、実践型の経営教育や、独立支援の仕組みを提供しています。

飲食業を「一生使い捨てられる現場」ではなく、「自分の未来をつくる現場」へ。 その構造改革は、今ここから始まっています。